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住まい探し体験記

特別賞作品  東京都:王林の芽さん

残り物には福がある、かも

案内図をFAXで受け取った瞬間、そこに住みたい、と思った。徒歩圏内に、ターミナル駅があり、デパート、映画館に、大型病院も。とにかく便利だ。 決めるつもりで見に行って、がっかりした。家がわずかに傾いている。隣の家も、境界のブロック塀も同じように傾いている。地盤沈下していることは明らかだった。家は取り壊して建て直すつもりだったけれど、あきらめた。

その後、他の物件をあちこち見てまわったけれど、ピンと来るものはなかった。あれほど便利な場所に住むことができるかもしれない、と一度思ってしまうと、どうにも他のところに住む気がしないのだ。

そして、数ヶ月後。不動産屋から電話が入った。「例の物件、まだ売れてなくて値下げしましたが、どうでしょうか?」やはりそこに住みたい、という気持ちは強かった。あらためて、近隣を良く見て回った。地層の地図や、近隣の地盤調査の結果も入手した。元々、それほど地盤が悪いわけではなさそうだ。思い切って購入した。 古家を取り壊してみると、基礎に鉄筋が入っていない、ずさんな工事だった。地盤調査の結果は、悪くはなかった。それでも、念のため地中深くまでコンクリートを流し込んで地盤改良を行った。費用は値下げ額より少なく、結果的に、周辺の相場より割安に入手することが出来た。

これから不動産を探す方に、一言。売れ残っている物件には、何らかの欠点がある。しかし、その欠点を克服したり我慢したりすることができないか、と考えてみると、選択肢が広がってくる。割安に入手できるチャンスもでてくる。 地盤の悪さは、地盤改良で技術的に対応可能だった。日当たりが悪くても、ガーデニングの趣味が無ければ、問題ないかもしれない。騒音がうるさくても、一年中窓を開けずエアコンをつけっぱなしにしている人には、問題無いのではないだろうか。視点を変えてみると、残り物には福がある、かもしれない。