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住まい探し体験記

特別賞作品  埼玉県:マロンさん

そして「住まいづくり」へ

「建売でなるべく希望に近い物件を探す」という家族会議(といっても2人)で決まった無難な方針のもと、住まい探しを始めて早数ヶ月。週末のたびに夫婦で物件を見て歩く作業は、最初のうちこそ楽しかったものの、行き詰まるのも早かった。

何しろ、どの物件も似たり寄ったり。悪くはないが、特に良くもない。まあ、一定の地域内で一定の予算内の家を見てまわっているのだから、当然と言えば当然だ。私たちは、何を決定打にすればいいのか分からなくなっていた。

そんなある日、住宅情報誌を見ていた私はひとつの物件に目を奪われた。予算内だし場所もいい。そして何より、木の温もり溢れる内装と広々とした吹き抜け。見つけた!と思った。夫が仕事から戻ると、すぐさま一緒に現場へ。もう時間は遅いが、外観ぐらい見られるだろう。気に入ったら明日不動産会社に連絡すればいい。長かった家探しもこれで終わりか……と、感慨さえこみあげた。

果たして、そこに家はあった。確かに外観は写真通り。ただひとつ思っていたのと違ったのは、家の真ん前の「お墓」。なぜここに?と思うような不自然な場所に、ぽつんとひとつ。「立ち退いてくれなかったんだろうな……」と夫。情報誌の写真の妙なアングルは、このせいだったか。悲しいような、夫に申し訳ないような、なんともいえない気持ちだった。ただ「ここには住めない」ということだけが、心の中ではっきりとしていた。

あれから1年。私たちは念願のマイホームに住んでいる。インテリアは、高級品ではないが私たちの好きなシンプルなもの。小さい庭にはウッドデッキ。屋上も吹き抜けもない、ごくスタンダードな2階建ての4LDKだが、少しずつ「自分たちの家」になっているのを感じる。今年の夏はプランターでゴーヤを作ろう、と夫は今から楽しみなようだ。「住まい探し」は終わったが、私たちの「住まいづくり」はまだまだこれからだ。