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住まい探し体験記

特別賞受賞作品 大阪府:家さがし子さん

すまい探しノスタルジー

家賃の条件が厳しすぎたことはわかっていたが、案内された家々はレトロを通り越して重文級だった。今は21世紀。フローリングでウォッシュレットでバブルバスの生活をしている身で、ライフスタイルを半世紀近く遡らなければならないような家には、いくら家賃が安くても引っ越す気にはなれない。

それにしてもこんなに時代ものの家が、いまだに解体建て替えされることもなく、健在なのに驚くやら、妙に感動するやらで、当初はこんな家を案内するなんて、と不満が顔をもたげたが、一緒に苦笑している営業マンと共に、せっかくだからと、博物館でも見るようなつもりで一応見学することにした。

古い家は庭が広い。車スペースが2台ほしい私にはうれしいのだが、中の古さに唖然とするのだ。さすがにどの家もリニューアルはされている。窓にはサッシが付いているし、トイレが洋式になっている。襖と土壁と畳で黴臭さが漂う家でも、トイレと洗面だけはバッチリだった。

いくつかの古家を巡りながら、幼い頃の3丁目の夕日の時代が思い出された。あの頃はこんな間取りが多かった。応接間だけ洋間で、小さなタイルばりの風呂があって、引き戸の扉で、間仕切りが多くて、壁土がぼろぼろ畳に落ちてきたり・・。床が波うっているような家をぎしぎしと見学しつつも、そんなに不快感はなかった。

かつての日本ではごく普通の家だったのだもの。妙に懐かしささえこみ上げてきた。この家も昔はモダンで立派な家だったはず。時代とはある意味で残酷なものだ。薄暗い家を出てマンション群を眺めて現実に戻った。「こんな家を借りる人はいないでしょうね。もう日本人はこういう生活できないもの」「そうですね。リニューアルしても難しいんですよね。でも解体するのも費用がかかって大変なんです。だから借りてが付くなら貸したいということなんですよ」。家主さんにとっても厳しい現実があったのだ。経済発展、生活様式の変化の陰で、ちょっと心が痛み、かつ優しい郷愁も覚えたある日の住まい探しだった。

従って、よくぞ思い切って購入したことは先見の銘があったと自画自賛をしている次第であります。