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特別賞受賞作品
契約は明日
購入する家が決まり、契約一日前。浮き出しあった気持ちでもう一度家を見に行く事にした。外装は完成していたのだが内装はまだできていない。それでも私達はその家を買うことに決めたのだ。
選んで決めたわけでもない、計画的に進めて決めたわけでもない。長い間借家生活をしていた私達に、自分の家が欲しい!という欲望が一気に爆発したのだ。
家のすぐ側の道は狭く一方通行になっている。左へ曲がり、坂道を上った所に家はあった。早く早く、我が家までもうすぐ、もうすぐ……。 「キュー、キュー!」しかし、車はその坂道を上れなかった。細い道、曲がり角、急な上り坂。何度も何度も主人はハンドルを切り返すのだが、車の悲鳴ばかりでちっとも上れない。
困るじゃない、これからここは自分の家になるのよ。駐車場だってあるのに……もっとしっかりアクセル踏まないと!とうとう車の後輪から煙が出てきてしまった。無理だ…ここに私達は住めない。
契約を解約すると同時に夢も希望も失った。新築一戸立て買ったのよ。実家にも近所にも、言ったのに、引越しの準備だって進んで…。しかし、新築一戸立てはこの世に一つではなかったのだ!
徹夜でネット上の家を検索し、不動産屋の案内してくれた家を見た。価格間取り、便の良さ。自分達で選び、自分達で探し出せたのだ。
今になって思えば最悪だと思った契約前のハプニングは、ラッキーな出来事だったのかも知れない。もしそのまま契約していたら契約金である百万は無駄になっただろう…考えてもぞっとする。
家を探すという事は、人生の中で一番楽しくエネルギッシュな出来事に違いない。







